別館第一倉庫

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続:ロッキード裁判を振り返る(その4)『論点2:総理大臣の職務権限について』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まった、渡部・立花論争内容をわかりやすく対話形式に直してお送りするシリーズ。今日は「論点2:総理大臣の職務権限について」です。
 前回同様、区別しやすいように渡部発言を赤字立花発言を青字にしました。また、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

 

[論点2]総理大臣の職務権限について

渡部「準職務権限だろうが純職務権限であろうが、職務権限で首相を有罪にしてよいかどうか」

立花「準職務権限という概念はない。あるとすれば準職務行為だろうが、これは、刑法197条1項の「職務に関し」の範疇に入るから受託収賄罪の構成要件になる。これについては、1956年7月の最高裁判例がある」

渡部「これは首相が金さえもらわなければ、民間会社の取り引きにどれにでも介入できることを意味している。これが合憲であろうか」

立花「民間会社の機種選定に口をはさむことは法律上許されていないので職務権限に入るはずがないというのが弁護側の主張だが、賄賂罪の成否を論ずる場合には、職務権限内の行為とみなされる、というのが一審判決の考え。つまり、職務権限規定からみて、違法行為、不当行為にあたるものは、『職務権限なし』と認められてしまって、賄賂罪が否定されるのなら、賄賂罪が成立するのは正当行為のときだけということになる。つまり、『なすべきことをした』人間は罰せられるが、『なすべきでないことをした』人間は罰せられないことになってしまう。そもそも賄賂は、通常すべきでないことをしてもらうために差し出すものであるので、そんなバカなことになったら、賄賂罪はほとんど成立しなくなる」

渡部「判決によると首相が私企業の商行為に介入できることになるが、それをよしとするのか」

立花「職務権限については、これまでの朝日ジャーナルの連載の中で論じている。そこでは渡部氏の職務権限論についても論じている。『首相が私企業の商行為に介入できる』云々についても、それが根本的無理解から発する珍論であることを説明した。その論破されたばかりの議論をもう一度そっくりそのまま繰り返すというのは信じられない。相手に再反論を加えたりして繰り返すならまだわかるが、ただ、バカの一つ覚えみたいに繰り返すだけである。ここで蒸し返して説明するようなヒマはない」


<感想>
 渡部昇一は、自分がした質問に相手が答えても、また同じ質問をすることがよくあります。論点2では、「首相が民間企業の取り引きに介入できることになる」という疑問を立花隆にぶつけ、一度その回答を貰っておきながら、また同じことを尋ねて、立花隆に呆れられています。

 さて、今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略です。
 また、今回の内容は、「その2、論点整理」で紹介した渡部・立花両氏の発言媒体のうち、(2)渡部「暗黒裁判論」、(9)立花「幕間ピエロ」、(10)渡部「借問す」をもとに構成しました。

 

 

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