別館第一倉庫

本館からロッキード裁判に関するものを移設しました。

続:ロッキード裁判を振り返る(その6)『論点4:嘱託尋問の法的根拠について』と『論点5:免責特権付き証言の証拠採用について』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まった、渡部・立花論争内容をわかりやすく対話形式に直してお送りするシリーズ。今日は「論点4:嘱託尋問の法的根拠について」です。
 これまで同様、区別しやすいように渡部発言を赤字立花発言を青字にしました。また、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

[論点4] 嘱託尋問の法的根拠について

渡部「検察が外国へ行って取ってきた調書をそのまま証拠として採用することが憲法の精神(当事者中心主義、公判中心主義)に違反するとは思わないか」

立花「嘱託尋問調書を取ってきたのは検察でなく裁判所なので、渡部氏の論点の立て方の大前提において間違っている。なお、採ってきた尋問調書をそのまま証拠に採用したなどということはない。厳しい証拠法論争を得て証拠能力を認めることになった」

渡部「嘱託尋問という外国の裁判所に代理裁判をやってもらって、その記録をそのまま証拠とするようなことを最高裁は許可した。これは第一審に最高裁が介入することになるが、許されるのか」

<感想>
 嘱託尋問の法的根拠については、「岸田コラム」を取り上げた「ロッキード裁判を振り返る(下)」の中で説明しましたが、渡部昇一は細かい所に関係なく、とにかく嘱託尋問調書を証拠採用するのは認められないという立場です。
 なお、上の渡部昇一の最後の言葉も、一連の論争の8年後に発表された(13)の「死に救われた」に載っているものです。一連の論争中に立花隆から「採ってきた尋問調書をそのまま証拠に採用することはない」と言われていたのに、それについては何も触れず、「その記録をそのまま証拠とするようなことを最高裁は許可した」と再び書いています。例の「渡部昇一単純繰り返しの法則」、恐るべしですね。


 これだけだと短いので、次の「論点5:免責特権付き証言の証拠採用について」も続けてやります。こっちも短いんです。

[論点5]免責特権付き証言の証拠採用について

渡部「共犯者に免責という利益を与えて誘導して得た証言を是とするのか」

立花「逮捕ができない外国人を免責して証言を得ることで、得られる公益のほうが大きいという判断が行われたということ。しかし、日本の免責は受けたが、アメリカの厳しい偽証罪を逃れる保証はない」

<感想>
 ひどく簡単なやり取りです。実際は、もうちょっと絡んでいるんですが、要点を抜き出そうとしたら、こうなってしまいました。
 同じ嘱託尋問調書の問題点でも、反対尋問がなかったことに対する追及に比べると、こちらの方はアッサリしているように思います。
 しかし、最終結論から言うと、コーチャン、クラッターの嘱託尋問調書は、第一審と控訴審で証拠能力を認められたにもかかわらず、最高裁で、日本に制度のない免責特権が付与されていることを理由に、証拠能力は認められませんでした。
 渡部昇一も、反対尋問の方じゃなく、こちらの方に力点を置いて嘱託尋問調書が無効だと主張すれば良かったんですが、ちょっと見誤ったのかもしれません。
 ただ、嘱託尋問調書が証拠から外されても、他の証拠で犯罪事実を認定できるとして田中被告の有罪はひっくり返りませんでした。
 
 今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。
 また、今回の内容は、「その2、論点整理」で紹介した渡部・立花両氏の発言媒体のうち、(1)立花「俗論を排す」(3)渡部「七ヵ条」、(10)渡部「借問す」、(12)渡部・立花「幕間ピエロ番外」、(13)渡部「死に救われた」をもとに構成しました。

 

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