続:ロッキード裁判を振り返る(その20)『立花隆から渡部昇一への質問8』
「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一と立花隆が朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる11回目です。
今回から、立花隆が「番外」の第八回で渡部昇一に投げかけた44の質問のうち、質問番号が[60]から[65]までの6問を取り上げます。
主に、刑訴法321条と嘱託尋問調書に関する質問です。
これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字、渡部側の発言は赤字で表示しました。
さらに、これもこれまでと同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。
【立花→渡部8】
[60]渡部氏は、反対尋問にさらされない共犯者の証言は、いかなる場合にも、証拠として採用できないとお考えなのか。それとも、刑訴法の規定によって、その証拠採用が許される場合もあるということをお認めになるのか。
渡部「本誌10月11日号の立花氏の質問[25]及び[26]に対する答えをお忘れか」
[61]共犯者ということをしきりと強調されるが、贈収賄罪の共犯は対向犯だから、普通の共犯関係とちがって、相手に罪を押し付けることで、自分の罪を軽くすることが全く不可能であることはわかっておいでか。対向犯の場合には、お互いに協力しあって、犯罪事実なしの主張をすることが、お互いの利益となり、相手の罪を認めることは、自分の罪を認めることになるのをご存知か。
渡部「だから『免責』ということが重大な問題として論じられているのである。立花氏がまだこんな初歩的、根本的な論点を理解してないとは思わなかった」
[62]問題の立て方が誤っている問いに対しては、問題の立て方が誤りであるという指摘が唯一可能な答えと思うがいかがか。
渡部「刑訴法226条を知っているはずの立花氏が、問題の立て方がおかしいといって回答を避けるのはおかしい。刑訴法のこの条項は元来は任意の取調べしかできないはずの参考人を強制的に調べるため、検察官が裁判官に、公判の前に証人尋問するためのものである。日本の裁判官が在米アメリカ人に日本の刑訴法を発動できないので、嘱託尋問が行われた。その時の執行官の前で、検事役の副執行官が日本から送られた数百の項目を質問した。この副執行官の補佐役として立ち会ったのが日本からの検事二人である。したがって、嘱託尋問を取ったことについて、形式上は刑訴法226条の国内の発動の代わりにやったことだから裁判所が許可したと言いうるものだが、このように「検事が取ってきた尋問調書」と言っても実質上は議論に全く差し支えないことは立花氏もよくご存知のはずである。しかも、この調書は反対尋問にさらされることなく証拠として採用されてしまった。これが問題でないと思うか、と私は立花氏に繰り返し聞いているのである」
[63]嘱託尋問の行為主体者は裁判所であるということが今はご理解できているか。
渡部「[62]に対する答えを参照」
[64]『借問す』の第三項を書くときにはそれを知らなかったのか。それとも無視されたのか。
渡部「[62]に対する答えを参照」
[65]「検事が外国に出かけて取ってきた尋問調書」なら、ただの検事調書であるということはおわかりか。
渡部「[62]に対する答えを参照」
<感想>
渡部昇一は嘱託尋問調書に関する質問に対して[62]で答えた後は、すべてその[62]に対する答えを参照としています。しかし、この[62]の答えに意味不明のところがあります。立花隆も指摘していましたが、私も最初読んでから今に至るまで理解できないのが「検察官が裁判官に、公判の前に証人尋問するためのもの」という部分。このまま読むと、検察官が裁判官を証人尋問する意味に受け取れますが、そんなことはないでしょうから意味不明な文になっています。
この人、田中裁判というものを、自分でよくわかってないんじゃないでしょうか。時々、奇妙な用語の使い方をするのも、そのためだと思います。
というわけで、今日はここまで、続きは次回にします。
※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。