別館第一倉庫

本館からロッキード裁判に関するものを移設しました。

続:ロッキード裁判を振り返る(その21)『立花隆から渡部昇一への質問9』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる12回目です。
 今回から、立花隆が「番外」の第八回で渡部昇一に投げかけた44の質問のうち、質問番号が[66]から[73]までの8問を取り上げます。
 ここでも主に、刑訴法321条について尋ねています。
 
 これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまでと同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部9】
[66]ただの検事調書でも、刑訴法321条の要件を満たせば、証拠能力が認められることはご存知と思うがいかがか。

渡部「刑訴法321条については今回の裁判においてその適用に重大な疑点があるとを私は繰り返し述べている。この法律を作成された横井大三氏さえ疑念を示しているし、石島弁護士も『いかさま裁判』の典型的な例であると言っている。その条文の適用が無理だと指摘されると『しかしながら』と明文規定にない拡大解釈になっているというのである」

[67]嘱託尋問調書にしろ、ただの検事調書にしろ、刑訴法321条の要件を満たしているかどうかの厳しい吟味がなされていれば、その証拠能力に問題がないということはおわかりか。

渡部「[66]の答え、及び前回の[26]の答えを参照」

[68]本件の嘱託尋問調書に関しては、「日本の裁判史上に残るほど激しい証拠法論争と、厳しい証拠能力の吟味」があったという事実自体(評価は別として)は認められるか。

渡部「この点で弁護団が激しく異議を唱えるのは当然」

[69]渡部氏は後になって、「そのまま証拠として」とは、「反対尋問にもさらさないで」の意味であったと弁解なさっているが、刑訴法321条は「反対尋問にさらさないで」証拠能力を与える場合の要件を定めたものであることをお忘れか。

渡部「[66]の答え、及び前回の[26]及び[35]の答えを参照」

[70]「そのまま」は、「反対尋問にもさらさないで」を意味するという論は、結局のところ、刑訴法321条全否定論に行きつかざるを得ないと思われるが、渡部氏の主張はその趣旨なのか。

渡部「厳密な適用を欠き、憲法の趣旨に反する方向に拡大解釈されることが通例になるとすれば、この条項は被告の人権にとって極めて危険である。321条廃止を唱える法律家の主張も一理あると思うに至っている。しかし、今回の一審のやり方に対して高裁や最高裁の判断がまだ出ていない。注目しているところである」

[71]別のところでは、渡部氏は刑訴法を尊重し、刑訴法321条の適用のされ方が問題なのだとの主張をなさっておられるが、あなたの主張はどちらなのか。321条全否定なのか。適用の仕方がよければよいのか。

渡部「[70]の答えを参照」

[72]もう一つ間違いを指摘すれば、日本の憲法は、裁判を当事者主義で行うことなど定めてはいないということをご存知か。

渡部「憲法の精神から言えば公判中心主義は当然である。いわゆる検面調書の用いられ方が、問題の多いことは多くの法律関係者の指摘するとおり」

[73]以上の諸点を理解していただければ、『借問す』の六ヵ条の第三項については問題の立て方が間違いだらけなので正面からは答えようがないという以外にないということが渡部氏にもおわかりになると思われるがいかがか。

渡部「問題の立て方は間違っていない。立花氏は答えないための逃げ口上を言っている」


<感想>
 例によって、渡部昇一は肝心なところを横井元最高裁判事や石島弁護士に全面委任ですが、[73]についてだけ補足しておきます。
 立花隆は[68]の質問の中で、嘱託尋問調書の証拠採用にあたって「日本の裁判史上に残るほど激しい証拠法論争と、厳しい証拠能力の吟味」があったとしています。また、[72]の質問で、日本の憲法に、裁判を当事者主義で行うという定めがないことを述べています。
 これらを前提にして[73]の質問になるわけですが、ここに出てくる『『借問す』』の六ヵ条の第三項とは次のものです。

 「日本の裁判は当事者中心主義、公判中心主義であると憲法は定めている。検察が外国に出かけて取ってきた尋問調書を、そのまま証拠として採用することが憲法の精神に反することと立花氏は思われないのかどうか」

 当事者中心主義は憲法で決められていない、尋問調書はそのまま証拠採用されたのではなく激しい論争の末に採用されたなど、この渡部昇一の『借問』の前提がことごとく間違っているので答えようがないということを立花隆渡部昇一に投げかけたのがこの[73]です。 
 しかし、渡部昇一の答えは「問題の立て方は間違っていない」。
 理詰めで攻めて来ている相手にこの対応では、自分が逃げ口上を言っていると思われても仕方ないですね。

 では、今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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続:ロッキード裁判を振り返る(その20)『立花隆から渡部昇一への質問8』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる11回目です。
 今回から、立花隆が「番外」の第八回で渡部昇一に投げかけた44の質問のうち、質問番号が[60]から[65]までの6問を取り上げます。
 主に、刑訴法321条と嘱託尋問調書に関する質問です。
 
 これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまでと同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部8】
[60]渡部氏は、反対尋問にさらされない共犯者の証言は、いかなる場合にも、証拠として採用できないとお考えなのか。それとも、刑訴法の規定によって、その証拠採用が許される場合もあるということをお認めになるのか。

渡部「本誌10月11日号の立花氏の質問[25]及び[26]に対する答えをお忘れか」

[61]共犯者ということをしきりと強調されるが、贈収賄罪の共犯は対向犯だから、普通の共犯関係とちがって、相手に罪を押し付けることで、自分の罪を軽くすることが全く不可能であることはわかっておいでか。対向犯の場合には、お互いに協力しあって、犯罪事実なしの主張をすることが、お互いの利益となり、相手の罪を認めることは、自分の罪を認めることになるのをご存知か。

渡部「だから『免責』ということが重大な問題として論じられているのである。立花氏がまだこんな初歩的、根本的な論点を理解してないとは思わなかった」

[62]問題の立て方が誤っている問いに対しては、問題の立て方が誤りであるという指摘が唯一可能な答えと思うがいかがか。

渡部「刑訴法226条を知っているはずの立花氏が、問題の立て方がおかしいといって回答を避けるのはおかしい。刑訴法のこの条項は元来は任意の取調べしかできないはずの参考人を強制的に調べるため、検察官が裁判官に、公判の前に証人尋問するためのものである。日本の裁判官が在米アメリカ人に日本の刑訴法を発動できないので、嘱託尋問が行われた。その時の執行官の前で、検事役の副執行官が日本から送られた数百の項目を質問した。この副執行官の補佐役として立ち会ったのが日本からの検事二人である。したがって、嘱託尋問を取ったことについて、形式上は刑訴法226条の国内の発動の代わりにやったことだから裁判所が許可したと言いうるものだが、このように「検事が取ってきた尋問調書」と言っても実質上は議論に全く差し支えないことは立花氏もよくご存知のはずである。しかも、この調書は反対尋問にさらされることなく証拠として採用されてしまった。これが問題でないと思うか、と私は立花氏に繰り返し聞いているのである」

[63]嘱託尋問の行為主体者は裁判所であるということが今はご理解できているか。

渡部「[62]に対する答えを参照」

[64]『借問す』の第三項を書くときにはそれを知らなかったのか。それとも無視されたのか。

渡部「[62]に対する答えを参照」

[65]「検事が外国に出かけて取ってきた尋問調書」なら、ただの検事調書であるということはおわかりか。

渡部「[62]に対する答えを参照」


<感想>
 渡部昇一は嘱託尋問調書に関する質問に対して[62]で答えた後は、すべてその[62]に対する答えを参照としています。しかし、この[62]の答えに意味不明のところがあります。立花隆も指摘していましたが、私も最初読んでから今に至るまで理解できないのが「検察官が裁判官に、公判の前に証人尋問するためのもの」という部分。このまま読むと、検察官が裁判官を証人尋問する意味に受け取れますが、そんなことはないでしょうから意味不明な文になっています。
 この人、田中裁判というものを、自分でよくわかってないんじゃないでしょうか。時々、奇妙な用語の使い方をするのも、そのためだと思います。
 
 というわけで、今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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続:ロッキード裁判を振り返る(その19)『立花隆から渡部昇一への質問7』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる10回目です。
 今回から、立花隆が「番外」の第八回で渡部昇一に投げかけた44の質問のうち、質問番号が[52]から[59]までの8問を取り上げます。
 主に、嘱託尋問調書の内容把握に関する質問です。
 
 これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまでと同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部7】
[52]これを書いた時点で、渡部氏が嘱託尋問調書を読んでいなかったことは明白だと思われるがいかがか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[53]これを書いた時点で、渡部氏は五億円の金の流れが裁判の中でどう問題にされてきたのかを全く知らなかったと思われるがいかがか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[54]実際の裁判において金の流れがどう審理されたかも知らずに、「裁判では金の流れが問題にされなかった」として裁判を批判するのは、頭がおかしいのではないかと思われるがいかがか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[55]渡部氏がクラッターから聞くべきことは何も聞いていないと主張し、私は聞くべきことは聞いてあると主張し、その証明としてクラッター証言が引用されたのではなかったか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[56]自分の主張が反論されるとあわてて、クラッター証言の抹殺を主張するのは、ゴマカシというべきではないのか。

渡部「私ははじめから反対尋問にさらされない証言を証拠にすることは暗黒裁判に通ずるという趣旨の発言をしてきている」

[57]巨額の現金がロッキード東京支社にいかに搬入され、いかに蓄積されていたかは、たとえ嘱託尋問のクラッター証言の証拠能力が否定されたとしても、田中弁護団が提出したニューマン報告書などの証拠によって裏付けられるということをご存知か。

渡部「[47]を参照。金の流れが文句なく確定できたのなら控訴はなかったろう」

[58]『暗黒裁判論』において渡部氏がクラッターに聞くべきことを聞かなかったので五億円の金の流れがわからなくなったと主張したのは、文章のコンテクストからいって、「肝心かなめの反対尋問をやらないで裁判を続けたから、核心に迫ることはほとんどなく、大部分はだらだらと検察官調書の任意性や信用性を争ったり、末梢的な証言の積み重ねをやって六年の月日を過ごしたのである」という結論を導くためであったと思われるがいかがか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[59]この結論部分が全くの誤りであることはすでに連載の中で詳細に指摘したが、その誤りは認められるのか。

渡部「認めるわけがない。[47]の答えを参照」


<感想>
 渡部昇一が嘱託尋問調書を読んでないのは確実のようです。裁判官は読むべきでないと主張しているくらいですから、当然かもしれません。ロッキード裁判批判派は他にもいますが、こんな人とひと括りにされるのは迷惑だろうな、と思います。

 では、今日はここまで、続きは次回にします。

※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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続:ロッキード裁判を振り返る(その18)『立花隆から渡部昇一への質問6』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる9回目です。
 今回から、立花隆が「番外」の第八回で渡部昇一に投げかけた44の質問のうち、質問番号が[44]から[51]までの8問を取り上げます。
 主に、証拠能力と証拠の証明力に関する質問です。
 
 これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまでと同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部6】
[44]渡部氏は『異議あり』の中で「証拠能力と証明力の区別をはじめて知ったのは『諸君!』1984年8月号の『匿名法律家座談会』によってだった」と告白しているが、それは本当か。

渡部「admissibleの法廷用語としての意味は英米の小説やテレビの法廷物が愛読していたので正確に把握していたが、『研究社大英和辞典』にも「証拠能力がある」という訳語は出てない。だから日本語の術語を知ったのはこの裁判に関心を持ってからだったが、その区別を知らなかったということはない。その区別を知らなければ反対尋問のなかったことを取り上げて裁判批判を始めうるわけがない。
 この裁判批判で、私は自分が素人であることを強調してきた。『素人にもおかしなところのわかる裁判』という点を強調してきたし、素人の私が『おかしい』と指摘した点は、石島弁護士や井上教授のような刑事裁判の専門家や、元最高裁判事(複数)も『おかしい』としている。私とは反対に、立花氏は素人なのに専門家のような態度をとり続けてきたが、その法律の理解の程度は、私以下なのではないかと思われる。第一審を不可謬なものと信じ、それと違う意見を、あらゆる罵詈雑言で批判するというのは、リーガルマインドがないからではないか」

[45]そうなると、『暗黒裁判論』を書いたときには、証拠能力の何たるかも知らなかったということになるが、その通りか。

渡部「[44]に対する答えを参照」

[46]『暗黒裁判論』の中で、クラッター証言は証拠能力を欠くから、その内容は無視せざるをえないとの主張が一行でもあったか。

渡部「『暗黒裁判論』は、本誌連載の一回分かそれよりちょっと多いぐらいの短いもので、すべてを書けるわけはなく、最も重要な点に注目を引いたのである」

[47]『暗黒裁判論』において渡部氏がクラッター証言を問題にした部分の主張の要点は、「五億円のお金が問題にされたのはほとんど聞いたことがない」というところにあったのではないか。

渡部「そんなことはない。贈賄事件において、贈った側の言い分を反対尋問にさらすことなく、証拠にした裁判に無理があるというのだ。私の主張はクラッターらの発言は、そもそも裁判官は読むべきものでないと考える立場なのである。それを根拠にして『有罪の推定』にもとづいているかのごとき裁判はするべきでなかったというのである。クラッターの発言を真実と思い込んでいるらしい立花氏の質問は全く問題にならない。なお金銭の授受は控訴審で大いに論議されるようである」

[48]この主張は、本当に裁判の審理過程を踏まえたうえでの主張だったのか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[49]この主張が、事実に照らして完全なデタラメであることを、連載3回で詳細に指摘したが、そこに異論がおありなのか。それとも、その部分はデタラメであったとお認めになるのか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[50]この誤れる認識の上に立って、渡部氏は五億円が問題にならなかったのはクラッターに反対尋問が欠けていたからだと主張したのではなかったか。クラッターに聞くべきことを聞いていなかったからだと主張していたのではなかったか。

渡部「[47]に対する答えを参照」

[51]その主張の中で、クラッター証言に証拠能力がないから、その内容を無視すべしとの主張が一行でもあったか。

渡部「[44]及び[47]の答えを参照」


<感想>
 朝日ジャーナルの連載の中で、立花隆は、証拠能力と証拠の証明力について大学受験資格と大学入試に例えて説明しています。
 高校卒業資格があれば誰でも大学入試に出願できるが、合格できるかは別の話である。この出願できる資格を得るのが証拠能力を認められるということであり、入試で合格するのが証明力を認められることだというものです。
 私には、この例え話がとてもわかりやすかったんですが、その理解に立つと、渡部昇一が質問[47]の回答で「私の主張はクラッターらの発言は、そもそも裁判官は読むべきでないと考える立場である」と言っているのは、証拠能力と証明力を混同しているように思えます。

 では、今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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続:ロッキード裁判を振り返る(その17)『立花隆から渡部昇一への質問5』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる8回目です。
 今回から、立花隆が「番外」の第八回で渡部昇一に投げかけた44の質問のうち、質問番号が[36]から[43]までの8問を取り上げます。
 主に、渡部昇一が裁判関係文書を読んでいるか尋ねる内容になっています。
 
 これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまでと同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部5】
[36]渡部氏は私の42回にわたる連載を読んでいるのか。

渡部「立花氏の書いたものの中のいたるところに削除されるべき箇所を発見できる程度に読んでいることは立花氏のご存知の通り」

[37]その連載の中で、これまでの渡部氏の主張のどこかどう反論されたか、理解しているのか。

渡部「[36]に対する答えを参照」

[38]理解できているなら、今後の議論の展開は、ゼロからの蒸し返しでなく、反論に対する再反論という形をとっていただきたいが、それがおできになるか。

渡部「[36]に対する答えを参照」

[39]裁判批判をなさるいは、当然、判決をお読みになっていると思うがいかがか。

渡部「無礼な質問というものがあり、まともに答えることが相手の無礼を認めることになる場合もある」

[40]判決を読んだとして、どこに発表されたどういうテクストでお読みになったか」

渡部「[39]に対する答えを参照」

[41]嘱託尋問について論じるからには、当然、次の文書には目を通しておられると思うがいかがか。もし、読んでいないのがあるとすれば、それはどれか。
   [イ]嘱託尋問調書
   [ロ]検察側意見書
   [ハ]弁護側意見書
   [ニ]裁判所の証拠決定書

渡部「[39]に対する答えを参照」

[42]『暗黒裁判論』をお書きになった時点では、判決と以上の文書のうち、どれとどれに目を通されていたのか。

渡部「[39]に対する答えを参照」

[43]判決を読まずに判決を批判したり、関係文書を読まずに嘱託尋問の問題を論ずることは、シェークスピアを読まずにシェークスピアを論ずるのと同じくらいおかしなことと思うがいかがか。

渡部「[39]に対する答えを参照」


<感想>
 確かに、ここにきて裁判関係文書を読んでいるか尋ねるのは、ある意味、相手(渡部昇一)をバカにしていると言えます。
 なので、途中で渡部昇一が「無礼な質問」と怒るのも無理ないと思いますが、これまでの渡部昇一の発言を聞いていると、立花隆の書いたものや質問[41]に挙がっている4つの文書を読まずに話をしているのではないかという疑念を覚えるのも事実です。

 今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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続:ロッキード裁判を振り返る(その16)『立花隆から渡部昇一への質問4』

 2日間お休みしましたが、再開します。

 さて、「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる7回目です。
 今回は、「番外」の第六回で立花隆渡部昇一に投げかけた31の質問のうち、質問番号が[23]から[35]までの13問を取り上げます。
 この13問は、主に刑訴法321条と憲法37条に関する質問です。

 なお、これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまで同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部4】

[23]渡部氏は憲法を尊重される方と思われるがいかがか。

渡部「その通りである」

[24]然りとすれば、憲法81条の「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」という規定も尊重なさると思うがいかがか。

渡部「その通りである」

[25]渡部氏は刑訴法を尊重なさる方だと思うがいかがか。

渡部「その通りである」

[26]刑訴法321条に、直接の証人尋問ができないときには、一定の要件のもとに、作成済みの証人尋問調書を証拠として採用してもさしつかえないとの規定があることをご存知か。

渡部「知っている。今回の裁判で、刑訴法321条の読み方が間違っていると石島弁護士が明快に述べている。またこの条文を作成した横井大三元最高裁判事も、この条項が今回の裁判のごとく読まれることに疑念を示している。加えて横井氏は『反対尋問権が保証されないまま証拠に採用された嘱託尋問調書の合・違憲性について最終的に最高裁の判断が必要となることもありうる』と言っている。元最高裁判事として極めて慎重な表現をとっておられるが、少なくとも今回の裁判の行われ方に対して、この条項の発案者であり最高権威から、重大な疑念がすでに出されていると言えよう」

[27]刑訴法321条の規定が、憲法37条2項の被告人の反対尋問権に照らして憲法違反であるとの訴えがなされたことがあるのをご存知か。

渡部「[26]に対する答えを参照」

[28]その訴えに対して、最高裁が、「憲法37条2項が、刑事被告人は、全ての証人に対して審問する機会を充分に与えられると規定しているのは、裁判所の職権により、又は当事者の請求により喚問した証人につき、反対尋問の機会を充分に与えなければならないという趣旨であって、被告人に反対尋問の機会を与えない証人、その他の者の供述を録取した書類は、絶対に証拠とすることは許されないという意味を含むものではない」との判決を下し、刑訴法321条は合憲との判断を示したことをご存知か。

渡部「[26]に対する答えを参照」

[29]同趣旨の訴えが何度か繰り返されたが、最高裁の判決はゆるがず、これが確立された判例となっていることをご存知か。

渡部「[26]に対する答えを参照」

[30]もし渡部氏が憲法を尊重なさる方なら、憲法81条にもとづいて、最高裁のこの憲法判断を尊重なさらなければならぬと思われるがいかがか。

渡部「[26]に対する答えを参照」

[31]法律を素人が自分勝手な解釈で読んでいると、ときどきとんでもない間違いを犯すことがあるのをご存知か。

渡部「素人も間違うことがあるが、専門家の誤りを専門家が直す場合はよくある(一審が上級審で逆転した場合など)。また素人の発言が専門家の支持を受けることもある。わたしが『諸君!』に角栄裁判批判を最初に出した時、元最高裁長官だった人たちは「素人が何をいうか」という趣旨の答えをなされた。しかし石島弁護士、井上九州大教授やその他の刑法学者、法曹家が素人の私の考え方の方が正しいとされている。だから素人だからダメとはならないと思う」

[32]渡部氏がわざわざ傍点をふって引用した、憲法37条の「すべての証人に対して」と「充分に与えられ」の部分の渡部氏の解釈は最高裁判例に照らして誤りであることが理解できるか。

渡部「[26]に対する答えを参照」

[33]「すべての証人」とは、法廷に喚問されたすべての証人を意味しているのだということがおわかりか。

渡部「これは証言を証拠として採用された証人のことである」

[34]「充分に与えられ」については、かって私が『大反論』において、「憲法37条が『不可侵性』を主張していないということは、ちょっと法律の知識がある人には、すぐにわかります。それに『充分に』という表現を用いていることです。法律というのは用語法が厳密で、『不可侵性』を主張する場合には、こういう曖昧な表現は用いず、『いかなる場合にも…できる』とか、『絶対に…禁ずる』といった疑問の余地がない表現を用いるものなんです」との説明を加えたが、これが法律の法文解釈の常識であることがおわかりか。

渡部「その通りだと思う」

[35]以上を要するに、渡部氏の「そうすると、簡単に言って、ロッキード裁判の第一審は、憲法の明快な規定を無視して進められた裁判である」という結論は全くの誤りということになると思われるがいかがか。

渡部「この場合は刑訴法の厳密な適用によらねばならず、憲法の趣旨に反する方向に拡大解釈されては絶対にいけない。第一審はこの点において重大な疑念を起こさせる。なお[26]に対する答えを参照」


<感想>
 ここでも渡部昇一は途中から「[26]の答えを参照」で、ずっと押し通しています。では、その[26]には「石島弁護士がこう言っている、横井元最高裁判事がこう言っている」と書いてあるだけで、ある意味、全面委任。お二方とも法律のプロでしょうが、具体論を全部そちら任せというのは、どうかと思いますね。渡部昇一先生御自身が「素人は黙っておれ」という言葉に腹を立て、素人の言うことも正しいものがあると自信を持っていただけに、こんな時だけプロの言う事を全面的に持ち出してくるのは妙な気がします。。
 少なくとも、立花隆からの質問[3]への回答で「一審判決の一方的解説はあっても、立花氏の意見は少しも明らかでない」と言った人の態度だとは思えません。

 今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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続:ロッキード裁判を振り返る(その15)『立花隆から渡部昇一への質問3』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。今回は、渡部昇一立花隆朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる6回目です。
 今回は、「番外」の第六回で立花隆渡部昇一に投げかけた31の質問のうち、質問番号が[11]から[22]の12問を取り上げます。
 ここで、立花隆は最重要証人の考え方について尋ねています。

 なお、これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字渡部側の発言は赤字で表示しました。
 さらに、これもこれまで同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

【立花→渡部3】
[11]犯罪にはすべて構成要件があり、構成要件がすべて立証されれば有罪、一つでも欠けば無罪になることはご存知か。

渡部「そう理解している」

[12]従って、「最重要証人」とは、その証人なしでは、犯罪の構成要件を立証できなくなる証人と定義されるべきであると思うがいかがか。

渡部「最重要証人とは、その証言を証拠として裁判所が採用した人のことである。たとえばコーチャンらは最重要証人の一人であり、榎本女史はそうでない」

[13]受託収賄罪の構成要件とは「公務員が」「職務に関し」「請託を受け」「賄賂を」「受け取る」の五つであることをご存知か。

渡部「そう理解している」

[14]この五つの構成要件はすべて、日本側の証言、証拠で立証できていることをご存知か。

渡部「第一審判決金科玉条主義から言えば、受託収賄罪は成立したとされる。それが無理な判決だというので被告弁護団は控訴しているのである」

[15]もし、コーチャン、クラッターを最重要証人というなら、二人の証言のどれが欠けたら、どの構成要件がくずれるのかを示さなければならないはずだと思われるが、それができるのか。

渡部「コーチャン、クラッターの証言が重要でないとすれば、なぜ証言を証拠として採用したのかわからなくなる。論争のある証拠をわざわざ採らなくてもよかったのではないかと考える」

[16]渡部氏は田中弁護団の控訴趣意書を読んで、それに「同感」したそうだが、田中弁護団は控訴趣意書の中で、コーチャン証言について、「コーチャン証人調書を詳細に検討すると、その証言の大半は、本件公訴事実との関連でいえば、コーチャン自身が経験していない事項即ち伝聞に亘る事項に関連していることがわかる。コーチャン自身が体験したものは、例えば、丸紅役員との協議、クラッターその他ロッキード社関係者との協議、その他トライスターの販売工作の経緯程度のものであり、公訴事実の中心である請託、金銭の授受、金銭の流れ等については、本人自身が体験したものではない」と主張しているのをご存知か。

渡部「[15]に対する答えを参照」

[17]その意味がおわかりになるか。それも含めて「同感」なさっておられるか。それともここには異論があるのか。

渡部「[15]に対する答えを参照」

[18]証人の証言が証明力を持つのは、証人の直接体験事実についてであるということをご存知か。

渡部「伝聞証拠禁止の原則の意味ならば然り」

[19]「公訴事実の中心である請託、金銭の授受、金銭の流れ等については、本人自身が体験したものではない」ということは「公訴事実の中心」については、コーチャン証言には証明力がないということがおわかりか。

渡部「[15]に対する答えを見よ」

[20]「公訴事実の中心」とは、前記した受託収賄罪の構成要件そのものだということがおわかりか。

渡部「[14]に対する答えを参照」

[21]構成要件立証に欠くことができない本当の最重要証人である丸紅三被告、榎本、松岡運転手など、「請託」「授受」の当事者、ならびに現場にいた人間に対しては、反対尋問がとことんなされたという事実問題をご存知か。

渡部「知っている。[14]に対する答えを参照」

[22]ということになると、田中裁判において、「最重要証人」に対する反対尋問は十分すぎるほど十分になされたというのが正しい事実関係のはずだと思うがいかがか。

渡部「[12]に対する答えを参照」


<感想>
 質問の積み重ねによって最重要証人の定義を明らかにしていった立花隆は、コーチャンらがその定義に当てはまらないことを渡部昇一にぶつけますが、返ってきたのが[14]の答えでした。この中にある「第一審判決金科玉条主義」のような、議論の根拠とは到底言えない単なるレッテル貼り用語で相手に反論した気になっているところが、つくづく議論に向かない人間だなと思います。
 その後も、[12]を見ろだの[14]を見ろだの[15]を見ろといった回答ばかりで、具体的な根拠を持った反論は出てきません。というか、出せないんでしょうね。
 この人は、こういう裁判批判論争なんかに首を突っ込んじゃいけなかったんだと思います。

 今日はここまで、続きは次回にします。
 なお、このところ毎日更新してきましたが、明日は都合でお休みします。ひょっとしたら明後日もお休みです。よろしくお願いします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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