ロッキード裁判を振り返る(上)
あちこちのサイトやブログを見ていたら、katsukoさんという方のこんなブログ記事に辿り着きました。
ロッキード事件、懐かしいですね。
あの裁判については、当時、英文学者の渡部昇一と評論家の立花隆との間で論争がありました。
渡部昇一が裁判批判派で立花隆が裁判肯定派でしたが、渡部昇一側には何人もの応援団が付いて、大論争になりました。
何がきっかけだったかは忘れましたが、ある時、その論争のことを知り興味を持ったので、その手の論争好きの先輩と一緒に、渡部・立花論争を追いかけ始めました。
リアルタイムから数年遅れての「追っかけ」でしたが、それぞれの主張が掲載された雑誌を古本屋で探したりその雑誌に掲載された文章が単行本化されていたら買ったりし、それを先輩と見せ合いながら、あーでもないこーでもないと話していたのが、今となっては楽しい思い出です。
話をkatsukoさんのブログに戻すと、このブログ記事は2年半以上前のものですが、中で紹介されている「岸田コラム」の記事は、それから更に8年ほど前、今から11年近く前のものです。
それでも、ロッキード事件の最高裁判決が出た9年後です。
最後の審判が下されてから9年も経っていたのに、この「岸田コラム」の人は、まだ「5億円を受領した物的証拠がない」とか「首相のトライスター機を全日空に買わせる権限の論拠があやふやだ」とか「嘱託尋問に角栄サイドの反対尋問が行われていない」などというようなことを問題だと言ってたんですね。
どれも裁判で判断が出ているものなんですが、この人、裁判自体は追わずに、裁判批判本だけを読んで書いたようです。
そして、それを信じて、このブログ主のkatsukoさんまで、御自分の記憶の曖昧さに何の疑いも持たずに「角栄はいったい何をしたというのかが不明なまま起訴された」などと書いていらっしゃる。何をしたかが不明なままで起訴できるわけないでしょ。
渡部昇一と立花隆との論争では、こうしたことが論点になりました。「岸田コラム」さんが述べているような疑問を提示したのが渡部昇一で、それに応えたのが立花隆でした。
その結果は、渡部昇一サイドがコテンパンにやられたというのが、論争を追いかけていた私と先輩の共通の感想でした。
渡部昇一の主張は、素人目にもわかるほどいい加減なものだったという記憶があります。
しかし、時間が経つと、そのいい加減だった方の言ってたことを「もっともだ」と思う人が出てきて(これが「岸田コラム」さん)、さらにその「もっともだ」と思った人が書いたものを読んで信じる人(これがkatsukoさん)が出てくるんですね。
そういう構図は歴史認識に関してよく目にしますが、ネット上で頻繁に見かける情報劣化連鎖の見本だともいえます。
何の因果か見つけてしまったので、訂正情報を伝えてもいいんですが、先方のブログにコメントしても、「2年以上前の記事に今頃、何?」と思われるだろうし、それに長いコメントになるので迷惑かもしれません。
「岸田コラム」さんが示している論点は、今さら取り上げるのはどうかと思うものばかりですが、それを信じる人が出てくるというのも困ったものです。
当時、あの論争を追っかけていた者としては、キチンと自分のブログで取り上げたほうがいいかもしれません。
ただ、私が知っているのは裁判をやってた時の話で、もし、その後「実はこういう新事実が!」なんて出ていたとしてもわかりません。
あくまで裁判の頃に表に出ていた情報を元に書かせてもらいます。
とりあえず、今日は長くなってしまったので、続きは次回ということで。
※ 有名人の方は原則敬称略になっています。
<2020.5.28追記>
文中で紹介したkatsukoさんのブログは現在も運営されていますが、「岸田コラム」は「Not Found」になっています。