別館第一倉庫

本館からロッキード裁判に関するものを移設しました。

続:ロッキード裁判を振り返る(その24)『秦野章について』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。
 前回から、論点とまでは言えない内容に関するやり取りについて、幾つか紹介していますが、今回は、元法相の秦野章についてです。

 渡部昇一は秦野章にも高い信頼を置いているようですが、その渡部昇一を熱烈に支持している「れんだいこ」氏も、同様に秦野章には信頼を置いているようです。
 そして、秦野章が、第一審後の岡原、藤林両元最高裁長官の発言を批判したところ、両氏から「法律のシロウトの言うこと」を批判されたことについて、「れんだいこ」氏は「元警視総監だった秦野章を法律のシロウト呼ばわりする神経が解せない」と立腹しています。

 しかし、その秦野章について、立花隆はまず、秦野の著書『何が権力か。』に次のようなことが書かれていると紹介しています。

・法の下では誰もが平等であるのが理想だが、現実にはそうはいかない。
・単純平等では世の中がスムーズに動かない面がある。
・総理大臣と町役場の一役人とを、同じ刑法197条の「公務員職務に関し」で、どうやって同じに裁ききれるのか。
・政治的には日本の代表に対して、単純に同法を適用するのは、おかしい。
・そもそも、総理大臣の職務を裁く能力が一審裁判所にあるのかどうか。

 そして、これらを通して、秦野章は「法の前の平等」という法の大原則を認めていないと批判しています。
 また、立花隆は、同書の中で秦野章が次のように書いている部分を紹介しています。

・逮捕された田中さんはほとんど取調べも受けていない。
・担当検事と田中さんとのやり取りは雑談ばかり。
・田中さんの口から自供を引き出そうとは思っていなかったのではないか。
・どう考えても、他の逮捕者にショックを与える衝撃逮捕としか思えない。

 そして、法廷で発表されている調書などから、田中角栄は、20日間の拘留期間中に、昭和51年7月27日付の「田中角栄の身上・経歴」から始まり、8月14日付の「田中が本件5億円の受領等を否認した事実」を述べたものまで、合計14通の検事調書を取られ、そのうち一通は、一問一答の形になっていることから、これらを読めば、秦野章の言う田中角栄の取調べの様子はデタラメであると述べています。

 その他、『論点8:外為法での逮捕は別件逮捕ではないかについて』で少し触れましたが、外為法による逮捕は別件逮捕であると主張しようとして国会の特別委員会で質問したところ、逆に外為法は「死に法」でないことが明らかになってしまったというようなこともありました。

 以上を見る限り、「れんだいこ」氏の立腹にもかかわらず、秦野章が法律のシロウト扱いされても仕方ないようです。
 自分の思い込みに沿った内容のものしか目を通さないのではなく、それと相対する考え方のものにも目を通せば、この程度のことで短絡的に腹を立てるようなことにはならなかったと思うんですが…。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。

 

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