続：ロッキード裁判を振り返る（その12）『渡部昇一から立花隆への質問３』
「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。今回は、渡部昇一と立花隆が朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる3回目です。
今回は、「番外」の第七回で渡部昇一が立花隆に投げかけた6つの質問を取り上げます。
前回同様、番号で渡辺側の質問を表示し、その後に立花側の回答、それに対する渡部側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号はこれまでからの通し番号になっています。
また、これまで同様に渡部側の発言は質問も含めて赤字、立花側の発言は青字で表示しました。さらに、これもこれまで同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。
【渡部→立花３】
[9]立花氏は「別件逮捕」をよしとされるか。
立花「連載16回に『3億円事件のような本当の別件逮捕が不当逮捕、違法逮捕の責めを免れないことはいうまでもない。そして、こうした別件逮捕を日本の警察がかなりしばしば行うという現実が批判されねばならないことも当然である』と書いている。渡部氏はどこに目を付けているのか」
渡部「立花氏は角栄被告に対しては別件逮捕も是としているようだ」
[10]被告の反対尋問権の保証を顧慮することなく、海外にいる共犯者などに利益を供与して取った証言を、そのまま[反対尋問にさらすことなく]証拠として採用するという判例が確立することに、立花氏は不安を感じていないというのは本当か。
[11]レフチェンコに対して、コーチャンやクラッターのような嘱託尋問調書の取り方をして裁判することに立花氏は賛成する意見の持ち主のように見えるが本当か。
立花「いずれについても、直接回答なし」
渡部「この２問については、[6]との関係で省略」
[12]適法手続きによって発見された犯罪のほかにも「犯罪事実｣があるような言い方を立花氏はしておられるように見えるが、これは本当か。
立花「直接回答なし」
渡部「立花氏は「有罪の推定」を持ち、近代法における重大な原理を無視しておられるようである。それは適法手続きによって発見された犯罪のほかにも、「犯罪事実そのもの」があると考えておられるのである。つまり刑事裁判における手続きの厳格さの必要ということをあまり認めておられないようである」
[13]立花氏は最高裁の免責宣明書には法的に全く問題がないという意見のように思われるが本当か。
立花「直接回答なし」
渡部「最高裁の免責宣明書には法的に全くの問題がないと立花氏は考えておられるようだ。免責証明書は司法行政事務であるという説明を立花氏は本当に信じているみたいである。しかし裁判の内容に少しでも関係がることを司法行政事務と呼ぶことはおかしい。最高裁判事であった団藤重光元東大法学部教授も「これは本当を言うと問題がある」と言っている。団藤氏の言われ方は控えめであるが、司法行政事務と言うのは無理だ、という意味にとっていいだろう」
[14]立花氏は第一審の判決には全く満足しきっており、一ヵ所も法的疑義を感じておられないような言動をされているがそれは本当か。
立花「直接回答なし」
渡部「立花氏は本当に第一審の判決のすみからすみまで満足しているのだろうか。一ヵ所も法的疑義を感じられないのか」
＜感想＞
渡部側の質問はこれで終わりです。
昔、この直接対決を読んだ時、噛み合っていないという印象が強かった覚えがあったんですが、今回読み返して、噛み合わないのは渡部昇一の相手の言い分を全く聞かないで自説を繰り返す態度に原因があったことがよくわかりました。
今回取り上げて質問で言うと[9]ですが、渡部昇一の「立花氏は別件逮捕をよしとするのか」との質問に、立花隆が「既に連載16回で、本当の別件逮捕は不当、違法であり、別件逮捕がしばしば行われるという現実は批判されるべきだと述べている」と答えたのに対し、渡部昇一の反応は「立花氏は角栄被告に対しては別件逮捕も是としているようだ」だけ。
渡部昇一の質問に対する立花隆の回答からは「議論」という形の対話をしようという意志が感じられますが、渡部昇一の反応からは「拒絶」しか感じられません。
立花隆が回答していないもののうち、[11]のレフチェンコの話は、『諸君！』1984年6月号の「『角栄裁判』は主権の放棄だ！」の中で同誌編集長が持ち出したのに対し、立花隆が同誌1984年7月号の「立花隆の大反論」の中で批判しています。
渡部昇一がその経緯を踏まえた様子もなく、ここで持ち出してきたために、（たぶん呆れて）回答しなかったんだろうと思います。
以上が、渡部昇一から立花隆への質問です。
次回からは、立花隆から渡部昇一に投げかけられた質問について取り上げますが、質問数が79と多いので、また数回に分けて掲載するつもりです。
※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。
