続:ロッキード裁判を振り返る(その15)『立花隆から渡部昇一への質問3』
「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まったこのシリーズ。今回は、渡部昇一と立花隆が朝日ジャーナル誌上で直接対決した「幕間のピエロ番外」を取り上げる6回目です。
今回は、「番外」の第六回で立花隆が渡部昇一に投げかけた31の質問のうち、質問番号が[11]から[22]の12問を取り上げます。
ここで、立花隆は最重要証人の考え方について尋ねています。
なお、これまでと同じく、番号で質問を表示し、その後に渡部の回答、それに対する立花側の反論があれば、それも一緒に対話形式で載せました。質問番号は通し番号になっています。また、これまで同様に立花側の発言は質問も含めて青字、渡部側の発言は赤字で表示しました。
さらに、これもこれまで同じく、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。
【立花→渡部3】
[11]犯罪にはすべて構成要件があり、構成要件がすべて立証されれば有罪、一つでも欠けば無罪になることはご存知か。
渡部「そう理解している」
[12]従って、「最重要証人」とは、その証人なしでは、犯罪の構成要件を立証できなくなる証人と定義されるべきであると思うがいかがか。
渡部「最重要証人とは、その証言を証拠として裁判所が採用した人のことである。たとえばコーチャンらは最重要証人の一人であり、榎本女史はそうでない」
[13]受託収賄罪の構成要件とは「公務員が」「職務に関し」「請託を受け」「賄賂を」「受け取る」の五つであることをご存知か。
渡部「そう理解している」
[14]この五つの構成要件はすべて、日本側の証言、証拠で立証できていることをご存知か。
渡部「第一審判決金科玉条主義から言えば、受託収賄罪は成立したとされる。それが無理な判決だというので被告弁護団は控訴しているのである」
[15]もし、コーチャン、クラッターを最重要証人というなら、二人の証言のどれが欠けたら、どの構成要件がくずれるのかを示さなければならないはずだと思われるが、それができるのか。
渡部「コーチャン、クラッターの証言が重要でないとすれば、なぜ証言を証拠として採用したのかわからなくなる。論争のある証拠をわざわざ採らなくてもよかったのではないかと考える」
[16]渡部氏は田中弁護団の控訴趣意書を読んで、それに「同感」したそうだが、田中弁護団は控訴趣意書の中で、コーチャン証言について、「コーチャン証人調書を詳細に検討すると、その証言の大半は、本件公訴事実との関連でいえば、コーチャン自身が経験していない事項即ち伝聞に亘る事項に関連していることがわかる。コーチャン自身が体験したものは、例えば、丸紅役員との協議、クラッターその他ロッキード社関係者との協議、その他トライスターの販売工作の経緯程度のものであり、公訴事実の中心である請託、金銭の授受、金銭の流れ等については、本人自身が体験したものではない」と主張しているのをご存知か。
渡部「[15]に対する答えを参照」
[17]その意味がおわかりになるか。それも含めて「同感」なさっておられるか。それともここには異論があるのか。
渡部「[15]に対する答えを参照」
[18]証人の証言が証明力を持つのは、証人の直接体験事実についてであるということをご存知か。
渡部「伝聞証拠禁止の原則の意味ならば然り」
[19]「公訴事実の中心である請託、金銭の授受、金銭の流れ等については、本人自身が体験したものではない」ということは「公訴事実の中心」については、コーチャン証言には証明力がないということがおわかりか。
渡部「[15]に対する答えを見よ」
[20]「公訴事実の中心」とは、前記した受託収賄罪の構成要件そのものだということがおわかりか。
渡部「[14]に対する答えを参照」
[21]構成要件立証に欠くことができない本当の最重要証人である丸紅三被告、榎本、松岡運転手など、「請託」「授受」の当事者、ならびに現場にいた人間に対しては、反対尋問がとことんなされたという事実問題をご存知か。
渡部「知っている。[14]に対する答えを参照」
[22]ということになると、田中裁判において、「最重要証人」に対する反対尋問は十分すぎるほど十分になされたというのが正しい事実関係のはずだと思うがいかがか。
渡部「[12]に対する答えを参照」
<感想>
質問の積み重ねによって最重要証人の定義を明らかにしていった立花隆は、コーチャンらがその定義に当てはまらないことを渡部昇一にぶつけますが、返ってきたのが[14]の答えでした。この中にある「第一審判決金科玉条主義」のような、議論の根拠とは到底言えない単なるレッテル貼り用語で相手に反論した気になっているところが、つくづく議論に向かない人間だなと思います。
その後も、[12]を見ろだの[14]を見ろだの[15]を見ろといった回答ばかりで、具体的な根拠を持った反論は出てきません。というか、出せないんでしょうね。
この人は、こういう裁判批判論争なんかに首を突っ込んじゃいけなかったんだと思います。
今日はここまで、続きは次回にします。
なお、このところ毎日更新してきましたが、明日は都合でお休みします。ひょっとしたら明後日もお休みです。よろしくお願いします。
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