別館第一倉庫

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続:ロッキード裁判を振り返る(その7)『論点6:藤林・岡原両元最高裁長官の三審制軽視発言について』

 「れんだいこ」氏のHPを見たことがきっかけで始まった、渡部・立花論争内容をわかりやすく対話形式に直してお送りするシリーズ。今日は「論点6:藤林・岡原両元最高裁長官の三審制軽視発言について」です。
 これまで同様、区別しやすいように渡部発言を赤字立花発言を青字にしました。また、わかりやすい対話形式にするために、両者の雑誌上での発言を簡略化していることをお断りしておきます。

[論点6]藤林・岡原両元最高裁長官の三審制軽視発言について

渡部「新聞のインタビューで、藤林、岡原の二人の元最高裁長官が、一審で不満なら控訴、さらに上告できることに否定的な発言をしていた。これは三審制を軽視するもので元最高裁長官の発言としてはおかしい」

立花「判決後、田中に対する辞職勧告が問題になる中、政府、自民党とも三審制を理由にその要求をはねつけた。最高裁で刑が確定するまで無罪が推定される。それまで一審判決など出ても出なくても同じという論法だった。それに対して、一審判決の重みを問うた質問に答えたのが二人の元長官の発言。両者の発言をよく読めば、最高裁まで行くことを前提としていることがわかるはずだ」

渡部「大学院生も私も第一審の判決に服すべきという印象を受けたのは事実。そうい印象作りに朝日新聞は成功した」

立花「被害妄想狂の男が通行人に殴りかかったとする。取り押さえられた男は『私の印象』では、その通行人の男に攻撃意図が見えたと弁解したら、殴られた通行人はたまったものではない。しかし、渡部氏の場合、被害妄想の加害者が、『お前は確かに俺に攻撃意図があるとの印象を与えた。その印象の責任をどう取るんだ』と難癖をつけているようなものだ。藤林元長官は渡部氏が引用している部分のすぐ後で『二審で最低三年はかかる。通常の例からすると刑事事件ですので最高裁で半年、長くて一年、そうすると、あと四、五年はかかるので、田中元首相は七十歳になる』と、最高裁まで行くことを当然の前提として語っている」

渡部「法律的に元最高裁長官の発言は現職の裁判官を拘束しないだろうが、心理的その他の麺では磐石の重みがある。裁判の枢要の地位にあった人が、予断を後輩の検事や裁判官に与えるような発言を大新聞でやってもかまわないというご意見なのだろうか」

立花「現職の検事や裁判官は、退官下先輩の新聞発言になどまったく影響されないものである。渡部氏は、田中弁護団に、元最高裁判事、元高裁長官、そして元高検検事長が、また小佐野弁護団には、元検事総長がいることをご存知ないのだろうか」

渡部「二人の元最高裁長官が新聞インタビューで『一審の有罪判決を重視せよ、上級審に進んでも一審判決は覆るまい』などと発言した。岡原氏に至っては、逆転無罪は100%ない、田中が議員を辞職しないのは司法軽視の姿勢を示すとまで発言して憚らなかった」

<感想>
 問題になっているインタビューは、藤林元長官へは毎日新聞が、岡原元長官へは朝日新聞が、それぞれ行ったものです。
 渡部昇一が話題にしている両長官の回答を引き出した質問ですが、藤林元長官への毎日新聞の質問は「田中元首相周辺では、まだ一審判決にすぎない、日本は三審制だから、という。一審判決の持つ重みとは、どういうものですか」というものであり、岡原元長官への朝日新聞の質問は「政府・自民党首脳は<日本は三審制だ。最高裁で刑が確定するまでは無罪の推定を受け、一審判決で辞職の必要はない>といっているが」というものでした。両方とも読んでみれば、立花隆の言うような内容だと思います。
 また、渡部昇一の後輩に予断を与える云々の話は、立花隆指摘の田中弁護団にも先輩はたくさんいますよという指摘でアッサリ崩れてしまいました。渡部昇一はもうちょっと考えてから口に出せばいいのに、と思います。
 それと、渡部昇一の最後の発言は、一連の論争の8年後に発表された(13)の「死に救われた」に載っているものです。例によって、論争中に相手側の主張など無かったかのように、最初と同じ主張を述べています。「渡部昇一単純繰り返しの法則」相変わらず恐るべしです。
 なお、「れんだいこ」氏はこの問題について、御自分のHPに「(元最高裁長官は)こういう場合にには『渦中の一人』として発言を差し控えるのが嗜みであろうに露骨に角栄訴追加担コメントしている。これはどういうことだろうか」と書いていますが、これなど全くの渡部昇一の当初主張のタレ流しであり、立花隆の反論を読んでいないことは明らかです。よくそれで立花隆批判を書けるものだと思いますね。それのほうがよっぽど「これはどういうことだろうか」です。

 今日はここまで、続きは次回にします。


※ 有名な方は基本的に敬称略になっています。
 また、今回の内容は「その2、論点整理」で紹介した渡部・立花両氏の発言媒体のうち、(2)渡部「暗黒裁判論」(3)渡部「七ヵ条」、(8)渡部「異議あり」、(9)立花「幕間ピエロ」、(10)渡部「借問す」、(13)渡部「死に救われた」をもとに構成しました。

 

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